はじめて読むひとは、ぜひ「その1」からお読みください
般若心経 現代語超訳
『仏説摩訶般若波羅蜜多心経』
この教えは、お釈迦さんを覚らせた仏さまがおっしゃったもので、心が豊かに、安らかになるための素晴らしい智慧のエッセンスについてのものなんだ。
観音さまっていう、とっても心のバランスがとれた仏さまがいるんだけど、その仏さまが、ある時、心静かに物事を観察していたら、心に何のわだかまりもなくなったんだ。そして、この世の中には何一つとして、永遠不滅で、変わらないもは無いっていうことがわかったんだ。
舎利子君、いいかい。物事は、その働きも、存在も、いろいろな条件が重なってそうなっているんだ。だから、その条件が変われば、結果も変わってくる。その条件は刻々と変化しているんだ。世の中はすべてそういう具合になっているんだ。
舎利子君、よくお聞きよ。色々な条件の中には自分の努力というのもあるけど、それだけじゃないんだ。ほかにも色々な、私たちには想像もつかないような条件が入り込んでいるんだ。
どんなものでも無数の条件でそこにあるのだから、何もないところから突然何かが出現するっていうこともないし、いきなり何にも無くなってしまうということもないっていうことさ。無くなるにしても何かの条件があるはずだからね。
物事は一見増えたり減ったりすることがあるけど、よく考えてみれば、ある場所から別の所へ移っただけなんだ。実質は増えても減ってもいないんだよ。
ちょっとびっくりするかもしれないけど、物だってさまざま条件によって変化しているし、私たちが頭で考えることだって、常に変化しているんだ。その日の気分っていうのがあるだろう。それと同じだよ。いつも自分は同じだと思っていたって、違っているんだ。なかなかそのことに気がつかないことが多いけどね。
よく人は年はとりたくないとか死にたくないって言うけど、じゃ年を取るって何だろう。死んじゃうってどういうことなんだろう。年を取るっていうのはある意味では成長するっていうことだろう。死にたくないっていうけど、それは死んだ後のことがわからないからだろう。じゃ私たちが生まれる前って何だったんだろう。きっと生まれる前と死んだ後は同じだよ。
私たちはこだわり過ぎるんだ。色々なことにね。こだわるっていうことは、そこにじっとしているっていうことだ。じっとしていたんじゃ他の素晴らしい世界を知ることもできないんじゃないかな。
仏さまたちはみんな、物事やその働きを心静かに観察して、そこから共通の法則を見つけ出したんだ。それを見つけ出すと、心が自由自在になるんだ。何かを恐がることもないし、現実を無視して「こうであったらいいのになあ」なんて夢見るようなことも考えないんだ。
こういう考え方というか、感性を身につけるのに、とっても素晴らしい呪文があるんだ。それはね、
ギャーテー・ギャーテー・ハーラーギャーテー・ハラソーギャーテー・ボージー・ソワカっていう呪文さ。
参考文献
宮崎忍勝 著『四国遍路』(朱鷺書房)
宮坂宥勝 著『仏教語小辞典』(ちくま学芸文庫)
中村元・紀野一義 註『般若心経・金剛般若経』(岩波文庫)
永田美穂 著『日本人のための仏教ガイド』(展転社)
水谷修・水谷信子 著『外国人の疑問に答える日本語ノート1』(ジャパンタイムズ)
中島 敦 著『李陵・山月記』(新潮文庫)
真言宗豊山派宗務所 編『真言宗諸経要集解説』—般若心経秘鍵—(真言宗豊山派宗務所)
『弘法大師空海全集 第二巻』—般若心経秘鍵—(筑摩書房)
加藤諦三 著『アメリカインディアンの教え』(扶桑社文庫)
ひろさちや『ぴっぱら(四一四号)』(全国青少年協議会)
大塚慈伸 真言宗豊山派東京四号仏青講習会資料